大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

浦和地方裁判所 昭和45年(わ)400号 判決

主文

被告人新井行忠を懲役壱年弐月に処する。

未決勾留日数中六拾日を右の本刑に算入する。

理由

(罪となるべき事実)

吉井明は的屋合津家一家太田同志会川口支部長、川崎勝美及び保坂喜志男は同支部副支部長、被告人は同支部顧問、長谷川義之、西田英二、曾根原秀隆、山田博、渋木澄、保坂金明は同支部会員であるが、

同支部会員遠山利博(当時三十八年)が右会から脱会を希望し、会の寄合い等にも出席しないことを快からず思つていたところ、昭和四十五年五月二十六日、右遠山を呼出して行つた曾根原から同人以外の者は「遠山のところには、ヤクザらしいのが七、八人いて用があるならそちらから出向いて来いと云つている」旨の報告を受けるやこれに憤激し、被告人は吉井明、川崎勝美、保坂喜志男、長谷川義之、西田英二、曾根原秀隆、山田博、渋木澄、保坂金明、〓山三男、石川利三郎、佐々木司と共謀の上、

第一、右遠山及び右七、八名の生命、身体等に共同して危害を加えることを決意し前同日午後十一時頃から翌二十七日午前二時三十分頃迄の間、埼玉県川口市朝日六丁目十番一号右遠山方及び附近路上並びに前同市東領家三丁目二十五番三号吉井明方に於て、被告人、川崎勝美、西田英二は〓山三男外一名と共に猟銃一丁、同弾薬二十発位、日本刀二振、包丁二丁、木刀二本位等の兇器を準備し、吉井明、保坂喜志男、長谷川義之、曾根原秀隆、山田博、渋木澄、保坂金明は右の通り兇器が準備されていることを知つて共に集合し、

第二、前記第一の日時場所に於て吉井明、川崎勝美、保坂喜志男、被告人に於て、交々右遠山に対し所携の包丁などを示し「お前などハンチク野郎は殺してもあきたらねえ、刀がけがれるからこれで指をつめろ、外で若い衆が鉄砲をもつてみな殺しにしてやるといつている」等と怒号し、日本刀を右遠山に向つて振り上げるなどして同人の生命、身体等に危害を加えかねない態度を示して同人を脅迫すると共に、その頭部、顔面等を手拳及びビール瓶様の瓶で殴打し、更に同人を足蹴にする等の暴行を加え、西田英二、長谷川義之、曾根原秀隆、山田博、渋木澄、保坂金明、〓山三男、石川利三郎、佐々木司等に於て右家屋内及び附近路上に於て待機し以て数人共同して兇器を示し且つ多衆の威力を示して暴行脅迫したものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

法に照すに、判示第一の所為は刑法第二百八条ノ二第一項、罰金等臨時措置法第二条第三条刑法第六十条に、判示第二の所為は暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条、刑法第二百八条、同法第二百二十二条第一項、罰金等臨時措置法第二条、第三条、刑法第六十条に該当するが、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条本文、第十条に則り、重き判示第二の罪につき定めた刑に法定の加重をした刑期範囲内で処断すべきところ情状について考えてみるに、判示所為は的屋会津家一家の組織を背景としたものであり、遠山利博に対する行為は執拗であり且つその度を越えていること、更に被告人の組織に於ける地位、役割、現実に行つた行為を検討して被告人を懲役一年二月に処し、同法二十一条を適用して未決勾留日数中六十日を右の本刑に算入する。

よつて、主文の通り判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例